体験・実践作文入賞作品

埼玉県剣道道場連盟の体験・実践作文でじゅんいちが第一位に入賞しました。おめでとう!!

 

じゅんいちの作品は1月に群馬県で行われる関東大会に出場します。

剣が教えてくれたこと

剣道希絆館 五年 福永淳一

  「また負けた。」
  一年前、僕の心の中では、チームが試合で負ける度にこんな言葉が心をよぎる日々が続いた。
  一年前より僕達は、先生や保護者の方々のおかげで、 多くの大会や錬成会に参加させてもらえる機会に恵まれ、僕の心は踊っていた。反面、チームとして勝つことができないことに対し、いら立ちを感じ同時に大切な仲間を責める気持ちすら生まれた。
  全国大会の予選を前に、稽古は一層厳しさを増し、道場の空気は張りつめた。僕の頭には、勝ちたい、とにかく勝って全国大会に出たい。ただそのことしか頭にはなかった。もちろん、仲間の足が悲鳴をあげている事、僕なんかよりもずっと大きなプレッシャーを抱えている事など、少しも考えずに過ごしていた。前日の夜は、気持ちが落ち着かず、皆に電話をして明日はどんなことがあっても頑張ろうと約束した。
  大会当日、一年間の思いを全て向けて試合に望んだ。僕は先鋒、絶対にチームとして一本とる使命があった。
  「面。」
  次の瞬間頭が真っ白になった。一本とられたのだ。コートを出て続く仲間の試合を見守ることしかできなかった。体が小さく気持ちの優しいリコが、僕の失点をなんとか取り戻そうと、体の大きな男の子に立ち向かっていた。ミズキは僕の失点の為に心が動揺し戦っている。ショウゴは、必死にこれ以上とられまいと戦い、ハルトは大将まで試合を繋げなかったにも関わらず、立派にチームの為に戦い抜いてくれた。僕の心は情けない気持ちで一杯になった。試合が終わり僕はチームの皆に謝ったが、誰一人、僕を責める仲間や先生はいなかった。僕は思った。この一年、自分はチームの仲間に何をしてあげられたのだろうかと。そして、自分をとても恥ずかしく思ったのだった。
  僕の道場の先生の剣道は、とてもかっこ良くて、強くて、いつか自分も先生のような剣士になりたいと思う。先生はいつも僕達に教えてくれる。
  「本当に剣が強いということは、相手の気持ちを深く考え、敬うことができ、自分に厳しい人だ。だからおごる事なく、練習を重ねることが一番大切なのだ」と。
  その日を境に僕の気持ちは晴れた。道場の仲間がいる事、チームで戦える事をうれしく思えるようにもなった。そして僕は、その日からチームの為にも、自分の剣道に力を注いでいきたいと思った。
  僕は、剣道を始めて七年になるが、今まで自分の勝負の事しか全く興味がなかった。剣道を続けてゆくには、先生方の御指導はもちろん、家族の協力、仲間の存在、そういった自分を囲む人達への感謝と思いやる心がなければならないのだと思った。
  その様な心を持って、日常を振り返ると今まで見えなかったことが見える気がした。社会で起きている人と人との揉め事、国と国との対立などは、この様な広く大きな心で相手を尊重する事が互いにできれば、もっともっと改善して行くのではないだろうか。
  明日、学校に行ったら僕は少し心を大きくして、いつも意地悪してくる奴に声をかけてみようと思う。もう少し、彼の気持ちを考えてみる事にしようと思う。
  次に負けたときは思う。
  「また負けた。」
ではなく、
  「なぜ負けた。絶対にあきらめないぞ。」
僕はそう心に決めたのだ。